果てしなき流れの果てに

自由に書き自由に消す

上手くいかない

 「当店スタッフおすすめ」のコーナーに、私好みのキャッチコピー付きの手作り帯をした本があり、買うべき運命であると判断した。

 自動レジがあるにも拘らず、通常のレジを選んだ。少しでも混むと、「よろしければこちら自動レジお使い頂けますよ」と誘導される可能性を認識しつつ。

 なぜ通常のレジを選ぶかというと、このコピーはこのお店の方が考えられたのですか、などと生身の人間に質問をし、少しでもこの優れた言葉の秘密を紐解きたいからだ(実際には、これは質問ではなく、答えの決まった質問であり、会話の糸口である)。

 幸い、レジには一組しか並んでいなかったので、無事に人動レジでの会計ができそうだった。レジのひとは優しそうなお姉さんで、私の質問も容易に尋ねることができそうだ。

 が、「お待ちの方どうぞ」と、先ほどまではクローズしていた隣のレジがあいた。早口の声。シナリオ狂う。このようにてきぱきした人の場合、無駄の余地がないから、私の質問を切り出すのは難しい。急いでいるときならむしろこちらのお姉さんのほうが有難かったはずなので、なんたる我儘であろう。しかし、今日はレジの人におっとりしていてほしかったのだ。

 更に不幸なことに、後ろに人が並びだした。そんなときに「ブックカバーはお付けしますか」と聞かれる。

 更には「Tポイントカードご利用のお客様にはくじを引いて頂けます」ときた。嗚呼、くじを引けるのは嬉しいけれど、後ろに人が待っているときにくじを引く気分は微妙である。そして、肝心の質問を切り出すことは不可能だ。

 やんぬるかな。以上の出来事は計1分にも満たぬはずだが、今日ここまで知らず知らずのうちに気を張っていたためか、路上で涙の一粒でも眼球から出してやりたいほどに疲れた。